東野圭吾

略歴
1958年大阪生まれ。
1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞受賞。
1999年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞受賞。
2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞受賞。
<加賀恭一郎シリーズ> <その他>
卒業-雪月花殺人ゲーム- 放課後
眠りの森 白馬山荘殺人事件
どちらかが彼女を殺した 学生街の殺人
悪意 11文字の殺人
魔球
ウィンクで乾杯
十字屋敷のピエロ
鳥人計画
殺人現場は雲の上
ブルータスの心臓
宿命
<探偵ガリレオ> 仮面山荘殺人事件
探偵ガリレオ 変身
予知夢 回廊亭殺人事件
容疑者Xの献身 パラレルワールド・ラブストーリー
レイクサイド
手紙



手紙  ★★★★★  2003年 毎日新聞社  

幼い頃父親を亡くし、女手ひとつで育ててくれた母も亡くし、兄直哉は弟の直貴を大学に行かせたくて、昼夜問わず働きづめの生活を送るが、とうとう体を壊してしまい職を失ってしまう。大学進学の時期を迎え、焦る直哉は一人暮らしの老婦人の家へ強盗にはいる。100万を手に入れた直哉だが、老婦人にみつかってしまい殺してしまう。その後直貴は殺人者の弟としてレッテルをはられてしまう…

犯罪の被害者と加害者。
昨今では被害者の遺族が保護される法律が整備されつつあるけど、これだってまだ不完全でまだまだって感じ。それとは対照的に加害者の家族…すごい難しい問題だと思う。加害者の親だったら責められたり、憎まれたりって分かるけど、直哉のような弟という立場は苦しいなぁ。直貴は「殺人者の弟」というレッテルをはられ、学校・仕事・バンドのプロデビュー・恋人と、これでもかと努力しても努力しても失っていってしまう。犯罪を犯すってことは、被害者、その家族はもちろん、自分の家族をも傷つけてしまうんだなぁ。本人は自分がしでかしたことで刑務所にはいったり、一生その重さを背負って生きていくしかないけど、加害者の家族ってのはどうしようもない。あからさまな差別はまだ分かりやすいけど、一番悲しいのは気をつかって一線をひいてしまう人々。これは本人たちにも、どうすることもできない部分があるだろうしすごく難しい。それを元に戻すこと、埋めていくことというのは並々ならぬことだと思う。すっごく重い内容だったけど、年明け早々良い本に出会えたなぁと思います。
2004/1/3読了
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変身  ★★★☆  1991年 講談社

平凡で気が弱い青年・成瀬純一は、ある日立ち寄った不動産屋で不慮の事故に遭う。強盗に入った男に拳銃で頭を撃たれてしまったのだったが、世界初の脳移植によって命をとりとめる。しかし術後、好きだった絵を描くことも徐々に出来なくなり、愛していた恋人まで疎ましくなってしまう。徐々に性格や言動が変わっていき、ついには人を殺しそうになってしまう。その原因が移植された脳にあるのではないかと思い、純一はドナーの正体を突き止めることに…

自分の脳の一部に他人の脳が移植される。10%だった場合、30%だった場合、そして99%だったになった場合に、それは本当に自分の「脳」だと言えるのか…徐々に自分が自分でなくなってしまう恐怖。肝臓などと違いただの「一臓器」としてはみれないのが「脳」。そこには科学だけでは割り切れないものがあるんでしょうね。主人公の純一が段々とドナーの「脳」にのっとられていく過程が怖いです。
2005/2/28読了 ▲リストへ
レイクサイド  ★★★★☆  2002年 実業之日本社

子供の中学受験の勉強合宿に姫神湖畔に集まった並木、藤間、坂崎、関谷の4組の家族と塾講師の津久見。親たちは藤間家の別荘に宿泊し、子供たちは近くの貸し別荘で一日中勉強漬け状態。並木俊介も仕事を終え別荘へと向かう。その後部下で不倫相手の高階英理子が俊介が忘れたという書類を届けにやってきて、藤間家で夕食をともにすることに。その晩、近くのレイクサイド・ホテルで2人で会う約束をし、俊介は約束の時間に訪れるが英理子は現れなかった。そして藤間家に戻ると妻の美菜子に殺された英理子の死体が…

役所広司、薬師丸ひろ子ら出演で映画化のCMを見て以前から面白そうだなぁ〜と思っていました。子供たちや自分たちへの影響を考えて、と不自然なくらいに事件の隠蔽に協力的な他の家族、俊介が英理子に頼んでいた調査、お受験仲間のあいだでの秘密ごと・・・と様々な謎が仕掛けられていて、息つく間もなく読みきってしまいました!受験への親のエゴ、無表情で親の言うままに勉強する子供たち・・・とても可哀想ですが、これに近い現実はたくさんあるんでしょうね。子供の将来の幸せを願うばかりに歯車が崩れていく大人たち。これで本当に家族が幸せになれるのでしょうか?映画もまだ見ていないので近いうちDVD借りてこようっと。ジャケットを見るに、原作では4組の家族が3組になっているっぽい。俊介の子供も息子ではなく娘のようですし・・・
2005/8/28読了 ▲リストへ
放課後  ★★★★☆  1985年 講談社

清華女子高の数学教師、前島は何者かに命を狙われ続ける。駅のプラットホームで突き飛ばされたり、プールのシャワー室で感電死させられそうになったり、頭上から鉢植えが落ちてきたり・・・そんななか、前島も利用している更衣室で密室という状態で生活指導の村橋が殺されていた…

第31回江戸川乱歩賞受賞作。
最近東野さんにはまりつつあるので、早い段階でデビュー作を読んでみようと思い立ちました。江戸川乱歩賞を受賞したということでしたが、かなりの著作数を誇る東野さん、失礼ながらもデビュー作ということであまり期待していませんでした・・・が、それは良い意味で裏切られました。やはりデビュー当初から「語る力」は並々ならぬものがあります。もちろんミステリとしてのトリックやどんでん返し的な構成も上手ですが、やはり東野さんの魅力はそのストーリーテリングが抜群なことですね。女子高を舞台にした殺人事件。もっと軽めなタッチかと思っていましたが、ちゃんとしたミステリでした。ただ犯人の動機がいかにもらしいといえばらしいのですが、ちょっと唐突すぎたようにも思えます。
ネタばれ→
ケイはいつも死体発見の時に前島といたりと怪しいなぁ〜と思っていたけど、主犯が宮坂恵美だとは思わなかった。仮装を入れ替わり殺されてしまった竹井も、不幸な手違いではなくちゃんと狙われて殺されていたんだとは驚き。そこまで見破れませんでした。前島を襲った車も一連の事件の犯人ではなく奥さんとその不倫相手だったとは・・・確かに恨まれるようなことしてるもんなぁ〜。
2005/9/4読了 ▲リストへ
白馬山荘殺人事件  ★★★★  1986年 光文社

ナオコの兄・公一は、1年前の冬「マリア様はいつ帰るのか」という言葉を調べてほしい、という葉書を出した後「まざあぐうす」という信州・白馬のペンションで自殺をしてしまう。その死に疑問を抱いた彼女は、毎年この時期に集まる常連客に話を聞こうと親友のマコトとペンションへ向かう。そのペンションの各部屋にかけられたマザー・グースの歌が書いてある壁掛け、兄が死んでいた密室、その1年前にもある人物が死んでおりナオコとマコトは謎を解こうとする・・・

毎年決まった時期に集まる常連客たち、マザー・グースと暗号・・・ミステリ好きの心をくすぐる材料ばかり(笑)マザー・グースって語呂あわせだったり、ナンセンスだったり、捉え方次第で残酷にも聞こえます。なんかミステリっとぴったりなんですよね。マザー・グースを使った暗号はなるほどなぁ〜と感心しましたが、もし自分だったら一生解読できそうにもありませんね(;´д` )兄の死の謎、暗号の謎、ペンションの元の持ち主だったイギリス人女性が残した「幸せの呪文」・・・最後もなかなかすんなり終わってはくれません。とにかくミステリ好きにはたまらない設定かも。
2005/9/8読了 ▲リストへ
秘密  ★★★★★  1998年 文藝春秋

スキー場へ向かうバスの事故で妻・直子を失った杉田平介。小学5年生の娘・藻奈美だけは奇跡的に助かる。一言も喋らないままに回復した藻奈美は、ある日衝撃的なことを口にする。「あたし、藻奈美じゃないのよ、直子なのよ。」と。助かった藻奈美の体には死んだ直子の人格がはいってしまっていた・・・

第52回日本推理作家協会賞受賞作。
最初のうちは死んだはずの妻が娘の体を借りて生きていた、という事実に戸惑いながらも喜んでいた平介。直子も藻奈美の人格が帰ってきた時の為にと一生懸命生きようとします。しかしそこには大きな隔たりがあるのも事実。愛する妻が目の前にいながら、体は娘のために夫婦生活もできず精神的にも辛くなってくる夫。娘の為、そして自分がもし人生をやり直せるなら後悔のない人生を送りたいと強く思う妻。2人の思いは藻奈美の体が思春期を迎え高校生になった時に、決定的に隔たってしまいます。年老いていく一方で若い体を手に入れ青春を謳歌する妻に平介は嫉妬を覚えます。直子もその気持ちが分かりながらも、彼女の家庭外での世界もあり板ばさみになります。途中から読むのが辛くなるくらいです。現実的でない設定なのにとてもリアル。タイトルの「秘密」がどこにかかるのか読みながら推理(?)していたのですが、そうくるとは〜・・・日本推理作家協会賞を受賞していますが、ミステリという枠にとらわれず色んな人が楽しめる内容だと思います。
2005/9/12読了 ▲リストへ
卒業-雪月花ゲーム-  ★★★★  1986年 講談社

就職、恋愛と忙しい7人の大学4年生。ある日、牧村祥子が自分の部屋で手首を切って死んでいた。部屋は密室で自殺の線が濃厚だったが他殺も疑われる。相原沙都子は金井波香とともに事件の真相を探ろうとする。そして恩師南沢雅子が催した茶席、「雪月花之式」で青酸カリのよって波香が殺されてしまう・・・

このように絡み合っていたんだなーと。トリックよりも動機に驚きました。今まで読んだ東野さんの作品もトリックミステリって感じではないですね、動機重視のミステリが多いんでしょうか。「放課後」は女子高が舞台だったにも関わらず青春小説になっていなかったのに対し、この卒業は青春小説って感じが似合います。友人同士の隠し持った感情、それぞれが卒業し社会へと向かう不安や期待といった感情が渦巻いていて良かったです。しかしお茶の世界って面白いなーと思いました。「雪月花之式」のようなお茶だったら楽しそうです。ただいつもはスーッと話に引き込まれるのですが、今回はちょっと乗りづらかったです。
2005/9/21読了 ▲リストへ
仮面山荘殺人事件  ★★★★★  1990年 徳間書店

樫間高之は森崎朋美との結婚式を1週間後に控えていた。そこに飛び込んできた訃報。朋美は打ち合わせの為、一人教会へ車で向かう途中崖から転落事故を起こしたのだった。3ヵ月後、朋美の父・森崎伸彦に一緒に別荘に行かないかと誘われる。その他にも朋美の母・厚子、兄の利明、従姉妹の篠雪絵とその遠縁にあたる木戸、朋美の親友の阿川桂子、伸彦の秘書・下条玲子の計8人が別荘に集まった。その席で桂子は朋美は誰かに殺されたのだと主張する。そしてその夜2人組みの強盗が別荘に押し入り全員が人質となってしまう・・・

こんな山荘物あり!?と、とても良い意味でショックでした。婚約者の事故死は実は殺人ではなかったのか、突然押し入ってきた強盗、そしてその中で殺された1人・・・ポイントを置くところが多岐にわたっているにも関わらず、スムーズに無理のない展開で読ませるのは、さすが東野さん!といった感。犯人は珍しく目星がつきました。なにか根拠があってというよりは漠然となんですが・・・(笑)。以降ネタばれ→
もしやこれはアガサ・クリスティーの「アクロイド殺し」のパターンかな・・・と。高之が朋美を殺そうとしたことは当たったけど、高之の朋美への殺意を確かめるための皆のお芝居だとは驚いたなー。強盗のリーダーのフジが姿をひたすらに隠すあたり、別荘内の誰かがかんでるかなーと思ったけど皆だとは・・・本当に脱帽です。
私は1995年に講談社から刊行された文庫サイズを読みました。順序だてて最初から読んでいる人は解説を読まない方が良いと思います。解説は折原一氏なのですが、東野作品のトリックの傾向とか書かれていて興ざめ。これじゃあこれから読もうとしている作品の面白さが半減・・・もちろん解説はその小説のネタばれが書いてあったりするので、絶対本編を読んでから読むのですが、他の作品のことに触れるなんて・・・ヒドイ。
2005/9/27読了 ▲リストへ
眠りの森  ★★★★  1989年 講談社

高柳バレエ団の事務所である男が殺される。被疑者でバレリーナである斎藤葉瑠子は正当防衛を主張するが、殺された男が盗みが目的で侵入したようには見えなかった。加賀たちが被害者の身元を割り出せた直後、バレエ団では本式舞台稽古の最中に、演出家の梶田康成が毒殺された・・・

「卒業-雪月花殺人ゲーム-」に登場した加賀が再登場します。大学卒業後、社会科の教師になりその後父親と同じ職業・刑事になっています。事件の舞台になったバレエ団ですが、私とは馴染みのないところですがとても興味深かったです。優雅に見えるバレリーナたちですが、その実、団から給料がでるわけでもなく、反対に維持費を払わなければならず、稽古があるためバイトもできず、かなり慎ましい生活をしています。お金になる人なんて本当に一握りなんですね。そこまでの苦労にも関わらずダンサーとしての情熱、執着はとてもすごいです。犯罪自体もバレリーナの因果というか・・・とても悲しい気持ちになりました。「卒業〜」では剣道一筋で武骨だった加賀がバレエに非常に興味を持ち、そしてそこの団員の女性にもかなり積極的でした。・・・なんか「卒業〜」の時とイメージ違うんだよなぁ(-_-;)沙都子のことは「大学時代の恋人」と言っていたけど、あれって恋人だったの〜?はっきり付き合っていたというか、仲良し仲間の中でお互い気持ちは分かっていた・・・くらいにしか思っていなかったので・・・。どうも加賀のイメージが違うんだよなー。
2005/10/3読了 ▲リストへ
どちらかが彼女を殺した  ★★★★  1996年 講談社

愛知県警豊橋署・交通課勤務の和泉康正の元へ東京で一人暮らしをしている妹・園子から電話がはいる。信じていた相手に裏切られたと言う園子は自分が死んだら一番いいんだろう、などと言って康正を不安にさせる。翌日の土曜日に帰省するはずだったが戻ってこず、連絡もとれなくなってしまう。心配になった康正は上京するがすでに園子は死んでいた。園子の死に不審を感じた康正は、自殺したように工作し自分自身で犯人を捜し始める・・・

加賀恭一郎のシリーズ第3弾です。とはいってもメインの探偵は園子の兄・康正。妹を殺した犯人を追い詰める様はものすごい執念を感じます。しかし感情的ではなく、交通課での事故の現場検証の経験をいかして、冷静に犯人を絞っていきます。タイトルにあるように犯人はある二人のどちらかに限定されています。ただ最後まで二転三転とし、結局作中で犯人の名前が出ることはありません。最後の最後でも犯人は「犯人」としての人称でしか書かれていません。自分で物語を丁寧に読んで推理しなければならないのです。今回読んだ文庫版は親本のノベルスのある重要な部分があえてカットしてあり、さらに難易度は上がっています。多分犯人は○○なんだろうなぁと思っても、やはり作中にはっきり書いていないと不安で落ち着きません(^^ゞネットで詳しく書いてあるサイトがあったので答え合わせをしようと試みたところ・・・ああ゛間違って同じ手法で書かれた「私が彼を殺した」を開いてしまった・・・記憶力が悪い私が早くその犯人の名前を忘れ去ってしまう日までお預けです・・・(泣)
2005/10/5読了 ▲リストへ
悪意  ★★★★☆  1996年 双葉社

人気作家の日高邦彦が自宅の仕事部屋で絞殺体となって発見される。発見者は妻の理恵と幼なじみで児童文学作家の野々口修。野々口はその日の夕方に日高と会っており、日高から電話で20時に自宅に来てほしいと言われていた。約束の時間に日高宅に着いたものの真っ暗なため、不審に思った野々口は理恵に電話をし、死体の発見に至ったのだった。野々口が書いた事件の手記から、刑事・加賀恭一郎は犯人を捕まえるが、決して動機を話さない犯人・・・果たして動機は何だったのか・・・

野々口の手記で話は始まり、加賀刑事の推理の記録と進みます。早い段階で犯人は分かるのですが、決して動機を語らない犯人に加賀は不信感を抱きます。こう来て、こういって、こう来るとは思わなかった!と翻弄されっぱなし。犯人が被害者で被害者が悪者なのか・・・犯人が誰か?というミステリーはごまんとありますが、ここまで「動機」が中核になるミステリはないかと思います。加賀恭一郎のシリーズは様々な手法が試みられていて面白いですね。普通に犯人当てもあれば「どちらかが彼女を殺した」のように加賀ではなく、別の人物が探偵役だったりします。(これは最後まで犯人名が出ないという変り種ですし)次はどんな手法で楽しませてくれるのか期待が高まります♪
2005/10/20読了 ▲リストへ
回廊亭殺人事件  ★★★★  1994年 光文社

一代で財を成した一ヶ原高顕が亡くなり、その莫大な遺産の相続にあたり、彼が所有していた「回廊亭」という旅館に一族と高顕の親友の妻・本間菊代が集められた。しかしその菊代は高顕の秘書・桐生枝梨子が変装したものだった。枝梨子は一年前に回廊亭で起こった心中事件の当事者で、彼女はその心中事件が自分と恋人の里中二郎を殺害するための偽装だったのではないかと疑っていたのだった・・・

「回廊亭の殺人」改題。
進行役は菊代に変装した枝梨子。彼女は恋人・二郎を殺された復讐をするために一ヶ原一族に近づきます。また東野さんは面白い視点で書きますよねー。犯人探しと復讐に燃える枝梨子、現在進行形で起こる殺人・・・と飽きさせません。ただ30代の枝梨子が70代の老女に変装しきれるのかなぁーという疑問は残りますが、最後も一筋縄でいかなく面白かったです。
2005/10/26読了 ▲リストへ
パラレルワールド・ラブストーリー  ★★★★★  1995年 中央公論社

総合コンピュータメーカーのバイテックで、仮想現実の研究をする敦賀崇史と三輪智彦は中学時代からの親友。ある日智彦が紹介したい彼女がいる、と連れてきた津野麻由子は、崇史が大学時代に電車でよく見かけて気になっていた女性だった・・・そして一方では崇史と麻由子は恋人同士で同棲しており、崇史は自分の記憶に違和感を覚えていく・・・

一目ぼれした女性が親友の彼女になってしまった世界と、自分と恋人同士で同棲している世界の2つの世界が交互に書かれています。嵩史たちの研究しているテーマが仮想現実だけに、何かトリックがあるんだろうな〜と気になって気になって一気読みしました。読んでいる方も2つの世界が融合してしまうような感覚に陥ってしまいちょっと混乱。題名からちょっとコメディタッチだったりするかな、と思っていましたがその反対でした。3人の気持ちがリアルでグイグイ引き込まれます。やっぱ東野さんは巧いなー。
2006/2/15読了 ▲リストへ
探偵ガリレオ  ★★★★☆  1998年 文藝春秋

燃える(もえる)
バイクに乗った若者達が、道路の行き止まりのバス停で週末になると騒いでいた。ある日、いつもの様に騒いでいると自動販売機近くのポリタンクに入っていたガソリンに引火し、目の前に立っていた少年は焼死してしまう。残りの少年達も重軽傷を負った。しかし証言から目の前のポリタンクより先に死んだ少年の後頭部に炎が上がったことが分かり・・・
転写る(うつる)
姪の文化祭を見学をしに中学校を訪れた草薙刑事。体育館横の「変なもの博物館」に興味を持った彼は奇妙な陳列物の中に「ゾンビのデスマスク」なる作品を見つける。その時二人の女性が入ってきて、そのデスマスクの顔は失踪した兄の顔だと言う・・・
壊死る(くさる)
自宅浴室で死んでいた高崎邦夫。一見、入浴中に心臓発作を起こし、そのままポックリいってしまったように見えるが、胸に直径10cmほどの奇妙な痣がついていた・・・
爆ぜる(はぜる)
夫・尚彦と海水浴場に訪れていた律子。泳ぎが得意でない彼女はビーチマットにつかまりながら波に揺られていた。不意にマットの下から若い男がぶつかってきた。その直後、海の中から轟音とともに黄色い火柱が現れ律子を飲み込んだ・・・
離脱る(ぬける)
自宅マンションで扼殺された長塚多恵子。容疑者として保険外交員の栗田信彦があがる。しかし栗田は犯行時間に営業先の多摩川沿いで車を停めて休んでいたと主張。しかし目撃者は現れず犯人の可能性が濃くなっていく。そんな中、上村という男が自分の子供が幽体離脱をし、栗田の車を見たという手紙を捜査本部に送ってきた・・・

警視庁捜査一課の草薙俊平刑事と大学の同窓生で現在、帝都大学物理学助教授の湯川学が事件を解決していきます。在籍していた学部がそれぞれ文系と理系で、草薙は大の理系音痴。対象的な二人ですが結構息が合っています。なかなか良いコンビです。事件は理系知識がないと解決は不可能、ということで草薙刑事同様理系音痴の私は読む前はちょっと不安でしたが、湯川先生の楽しい(?)実験のおかげで割りとすんなり理解できました。作家になる前はエンジニアだったという東野さんらしい作品ですね。
2006/4/20読了 ▲リストへ
予知夢  ★★★★☆  2000年 文藝春秋

夢想る(ゆめみる)
16歳の森崎礼美の部屋に坂木信彦という男が侵入する。触れようとした瞬間猟銃を構えた礼美の母親が現れ坂木は逃走。坂木はこの二ヶ月間礼美を付回しており、17年前から礼美が自分の恋人だと信じており・・・
霊視る(みえる)
長井清美とのデートを終えた細谷忠夫は大学時代からの友人・小杉浩一に会う為に電話をする。しかし小杉は仕事で大阪に行っており、留守番を預かっていた同じく友人の山下が出る。久しぶりに飲み明かそうと誘われた細谷は小杉の家へ。そこで庭に面した窓のすぐ外にに清美の姿を見かける・・・
騒霊ぐ(さわぐ)
姉に頼まれてある女性に会うことになった草薙刑事。その女性・神崎弥生の夫・俊之が5日前から行方不明になっていた。営業でよく訪れていた独り暮らしの老婆・高野ヒデの家に立ち寄ったのではないかと考え行ってみると、ヒデは数日前に亡くなっており、そこには甥夫婦ともう一組の夫婦が同居しており、彼らは毎晩決まった時間に外出するようなのだが・・・
絞殺る(しめる)
町工場の社長・矢島忠昭が金の回収をすると出かけ、都内のビジネスホテルで他殺体となって発見される。睡眠薬を飲まされたうえで絞殺されたようだったが、絞殺痕には不審な傷があり、またカーペットには焦げ跡が付いていた・・・
予知る(しる)
自宅で妻と大学の後輩で同じ会社に勤める峰村英和と一緒に夕食をとっていた菅原直樹。突然携帯が鳴り、相手は不倫イ相手の瀬戸富由子。彼女は向かいのマンションに住んでおり、今すぐ奥さんに自分とのことを話さなければ自殺すると迫り、本当に自殺してしまう・・・

草薙刑事&湯川助教授シリーズの2作目。前作同様、理系事件のオンパレードです。一見オカルトにしか思えない事件も湯川先生の手にかかればスッキリ。この対象的で永遠のライバルでもある超常現象と科学、この二つをうまく取り入れていて面白かったです。17年前、少女が生まれる前からその子が自分の恋人だと信じていた「夢想る」はこんな展開になるんだーと予想もつかない結末。5編の連作短編集なので理系音痴の私が読むには丁度良い長さなのかも・・・
学生街の殺人  ★★★☆  1987年 講談社

津村光平は大学を卒業したものの目指すものもなく、やりたいことを見つける為に就職をせず学生街の喫茶店で働いていた。そのビルの3階は喫茶店のオーナーがビリヤード場をやっており、以前はサラリーマンだったという松木元晴が働いていた。松木は一昨日の休暇後、翌日は無断欠勤をし光平が様子を見に行くことに。そしてアパートで背中を刺され絶命している松木を発見する。そしてスナック「モルグ」で働く光平の恋人・広美も自宅マンションのエレベーターの中で何者かに殺害される。しかも現場は密室状態・・・光平は広美の妹・悦子と真相を解明しようとする・・・

以前は活気付いていたものの、大学の正門の方角が変わってからすっかり寂れてしまった学生街。そこに集まる人間も光平のようにやりたいことがなかったり、松木のように脱サラ(?)して何が目的でいるのかも分からないという、街全体が気だるい雰囲気があります。そして連続して起こる殺人事件と恋人・広美の秘密、この2つが物語りの謎部分になっています。19年前の作品なのでちょっと背景などは古臭く感じますが、事件そのものはもちろん今でも十分に通用します。ネタばれ→
松木と広美が殺された事件は企業スパイを巡るもので、堀江園長が殺された事件はもう1つ真相が隠されてます。それは「モルグ」のママ・純子と広美が起こした事故のこと。その被害者に罪悪感を抱き、広美の恋人で被害者の主治医でもあった斎藤から身を引いた広美。その秘密を知る彼女を松木の事件の際に、間接的にだが殺すことにした純子。この対照的な2人の友情が悲しいなーと思います。光平と悦子が入った「首をふるピエロ」という喫茶店、これって「卒業-雪月花殺人ゲーム」にでてきたあの店でしょうか?
2006/4/26読了読了 ▲リストへ
11文字の殺人  ★★★  1987年 光文社

推理小説作家の「あたし」の恋人でフリーライターの川津雅之が殺される。毒殺されたうえに頭をハンマーか何かで殴って港のそばに捨てられていたのだった。2日前の夜、命を狙われていると言っていた雅之だったが詳しいことは話してもらえなかった。葬儀後、雅之の妹・幸代から連絡があり資料やスクラップを郵送するので引き取ってほしいということだった。了承し部屋の片付けも手伝うことに。そして指定された日に訪れると、以前、雅之と一緒に仕事をしていたカメラマンの新里美由紀が突然現れ手伝っていた。そして仕事の都合上どうしても見たい資料があるというので明日会う約束をする。しかし彼女は約束の時間に現れず、他殺体となって発見される。「あたし」の親友で出版社に勤める萩尾冬子とともに真相を探ることに。そして1年前にY島で起こったクルーザー転覆事故に何か秘密が隠されているのではと疑うのだが・・・

いきなりネタばれに近くてすみません。→
「11文字の殺人」ってどういう意味のタイトルなんだろう?と思ったら、モノローグで出てくる「無人島より殺意をこめて」という11文字のことなんですよね?タイトルがすっごく思わせぶりで暗号解読ものかしら!?と息を巻いていた私はちょっと裏切れた気持ち。ただそれが11文字だったということで、それ以上の意味は無し。作中でもまったく重要視されてません。これまた作品自体も19年前ということもあり、スポーツクラブが珍しがられるあたり時代を感じます(^^ゞ肝心のミステリ部分も2時間のサスペンスドラマ的。実際と違いますが、最後崖の上で犯人に詰め寄る、みたいな展開が似合いそうですね。ところで主人公が待ち合わせに使っていた喫茶店は「卒業-雪月花殺人ゲーム」や「学生街の殺人」に出てきた「首をふるピエロ」でしょうかね?名物(?)のシナモンティーが出てきましたもんね。それと最後まで主人公の名前が出てきませんでした・・・そういえばそうだったなぁ。
2006/4/28読了 ▲リストへ
魔球  ★★★★  1988年 講談社

昭和39年の春の選抜高校野球大会で開陽高校のエース・須田武志は九回裏の二死満塁のピンチを迎えていた。最後に武志は揺れて落ちる魔球を投げ試合は終了する。この大会後まもなく捕手・北岡明が愛犬と共に刺殺体で発見される・・・

東京オリンピック開催年に起こった2つの事件。1つは高校の野球部員が殺されるというもので、もう1つは東西電機に爆弾が仕掛けられるというもの。一体なんの接点もないような2つの事件がどうやって交わるのか・・・かなり?な状態で読んでましたが、もう最後は切なさで胸がいっぱい。天才と呼ばれた武志だったけど、貧しい家族を一刻も早く楽をさせてあげたいという理由からで、毎日血の滲むような努力があったからこそ。ここまで野球一筋だったら、普通は贔屓の野球チームがあってもおかしくないのに、それすら無くひたすらにプロになってお金を稼ぐ手段としてしか考えていないのです。自分は野球で、弟の勇樹は勉強で母を楽にさせてやる、この年頃の子にしてはしっかりしてるけど、それがかえって辛いなぁ・・・
2006/6/7読了 ▲リストへ
ウインクで乾杯  ★★★☆  1992年 祥伝社

玉の輿に乗ることが夢のパーティー・コンパニオンの小田香子。ある日銀座のホテルで「華屋」という宝石店の感謝パーティーが行われ、香子もその仕事についていた。そして仕事が終わり、ホテルのラウンジで以前から狙っていた高見不動産の専務・高見俊介を見つける。偶然を装い一緒にお茶をするために同僚の牧村絵里と別れ高見の元へ・・・しかしその後、絵里子がそのホテルの一室で青酸カリ入りのビールを飲んで死んでいるのが発見される。部屋には鍵とチェーンまでかけられており、警察は自殺の線で捜査を進めるのだが・・・

1988年に祥伝社から出版された「香子の夢-コンパニオン殺人事件」を改題したもの。
「ウインクで乾杯」とはすごいタイトルだな〜(-_-;)それもそのはず、時代はバブル真っ盛りといった感じ。全体のノリが赤川次郎っぽいです。こ、これはダメかも・・・と思ってましたが、さすが東野さん、なかなか面白かったです。絶対に玉の輿に乗りたい香子ですが、彼女なりに努力は怠らずで憎めないんですよね。隣に越してきた刑事・芝田もこれまた憎めないですが、一般人相手によくもまぁ、それだけ捜査状況をペラペラ話すなーと少々呆れてみたりして。改題する前は「香子の夢」だった訳で、「夢」ってずばり玉の輿なんだろうなーと思うと、なんと思い切ったタイトルをつけたのだろう・・・ネタばれ→
しかし「ヒガシ」が華屋の三男坊・西原健三だとはなー。自らの野心のために道化に徹していたとは驚き。
2006/6/9読了 ▲リストへ
十字屋敷のピエロ  ★★★★  1989年 講談社

十字屋敷に暮らす竹宮一家。そこで社長である竹宮頼子がバルコニーから飛び降り自殺をする。水穂もその伯母の四十九日の法要ということで久しぶりに十字屋敷を訪れる。そこへさ悟浄真之介と名乗る人形師が訪ねてくる。悟浄は自分の父が作ったある「ピエロ」を探しており、先日頼子が購入したそのピエロを買い戻したいということだった。悟浄の話しではその人形は悲劇のピエロと呼ばれており、歴代の持ち主を不幸にするという不吉なものらしい。そしてその夜、現社長で頼子の夫・宗彦が秘書の三田理恵子と共に書斎で殺されていた・・・

館ものならぬ屋敷もの・・・?一族に起こる不幸、と本格ミステリの要素はバッチリといったところ。面白いのは要所に人形ピエロの視点で事件が語られているところ。作者の思惑にすっかり騙されました・・・(^^ゞ最後に分かる真相にちょっと悲しい気持ちに。しかし東野さんってピエロがお好きですね。「首をふるピエロ」という喫茶店も何作かに登場しますし・・・確か以前、なにかのインダビューでピエロは東野さんにとって縁起が良い、と言っていたような気が・・・
2006/6/12読了 ▲リストへ
殺人現場は雲の上  ★★★  1989年 実業之日本社

ステイの夜は殺人の夜
新日本航空乗務員のエー子とビー子は宿泊先のホテルで機長達と共にいつものスナックで飲んでいた。そこへ本日エー子達の飛行機の乗客・本間と出会い、一緒に飲むことに。具合が悪くてホテルの部屋にいるという妻のから電話があり、サンドウィッチを注文する。しかし部屋に戻ると妻が殺されており・・・
忘れ物に御注意ください
旅行会社の企画で「ベビー・ツアー」の客を乗せた飛行機の担当になったエー子とビー子。客達がおりシートを確認しているとビー子が置き去りにされた赤ちゃんを発見する・・・
お見合いシートのシンデレラ
飛行機で「お見合いシート」と呼ばれる座席に座っていたのは中山というビー子好みの男性。後日ビー子はこの男性からデートに誘われるのだが・・・
旅は道連れミステリアス
エー子とビー子も知り合いの和菓子屋「富屋」を営む富田敬三が浜松のホテルで女性と心中しているのが見つかる。前日偶然にも同じ飛行機に乗務していた二人だったが、女性の影などはなくおしどり夫婦だったはずの富田が浮気相手と心中するようにも思えず・・・
とても大事な落し物
エー子が飛行機のトイレの中で拾った落し物はなんと「遺書」。アナウンスで聞くこともできずエー子とビー子が持ち主が誰なのか推理する・・・
マボロシの乗客
羽田空港内にある乗務員室に怪しげな男から電話がくる。男は昨日女性を殺したと言い、金を払わなければ次々と乗客を殺すと脅迫してきたのだが・・・
狙われたエー子
休みのエー子は買い物に出かける。しかしそこで尾行されているような気配を感じ、早々とマンションに帰ることに。しかしその帰り道何者かに車でひかれそうになる・・・


美人でしっかり者のエー子こと早瀬英子と少々太り気味で野次馬根性なら誰にも負けないビー子こと藤真美子の凸凹コンビの連作短編集。タイトルから飛行機の中で起こる殺人事件かなーと思っていたら、事件は全て地上で起こってました(-_-;)各章のタイトルが「ウインクで乾杯」同様、赤川次郎を感じさせます・・・ユーモアミステリーとでもいうのでしょうか、テンポが良いのでサクサク読めます。読み終わるとそれなりに満足してたりして(笑)
2006/6/26読了 ▲リストへ
ブルータスの心臓  ★★★★  1989年 講談社

産業機器メーカー・MM重工で人工知能ロボット開発を手がける末永拓也は、不遇の幼少時代より、いつかは自分も支配者側の人間になるのだと誓い、エリート技術者としてそのチャンスを伺っていた。MM重工創始者の息子で、次期社長に有力視されている専務・仁科敏樹の情報を得るために、役員室勤務の雨宮康子に近づく。そして敏樹の次女・星子の婿候補として名前があがることに。しかしそんな大事な時に康子から妊娠したと告げられる困った事態に。そして俊樹の長男で星子とは異母兄の直樹から呼び出され、康子の殺害計画を持ちかけられる。なんと直樹とそこに呼び出されたもう一人の婿候補の橋本敦司も康子と関係があったのだった。直樹の計画では、Aが大阪で康子を殺し、名古屋でBが待機し東京まで死体を運び、Cが死体を処理するというリレー殺人。Bの役割となった拓也がCの橋本と落ち合った際に、死体が康子ではなく何故かAの直樹だったことが分かり・・・

3人のリレー殺人・・・うーんすごいこと考えるなー。2人が共犯でお互いのアリバイを確保するってのはよくあるけど、3人となるとなかなかないかな〜。計画は綿密なんだけど、現実にはこんな順調にいくもんかなーと思いきや、届けられた死体が何故か殺害計画を持ちかけた直樹自身。一体誰が殺したのか・・・康子なのか、それとも第三者なのか・・・そして拓也にも危険が忍び寄ります。殺人事件に関わった犯罪者が、今度は自分が殺されかけ追い詰められていくっていうのは新鮮で面白かったです。ただ警察の推理が「なんでそんなに急に結びつくかな〜?」と思ったりして(^^ゞ
2006/6/27読了 ▲リストへ
宿命  ★★★★☆  1990年 講談社

日本でも屈指の電気機器メーカーのUR電産の社長・瓜生直明が病死し、親戚の須貝正清が社長に就任する。しかし正清はジョギング中に何者かに殺されてしまう。凶器は直明の遺品でもある毒矢の仕込まれたボーガン。この事件を担当することになった刑事・和倉勇作は、直明の長男・晃彦とは小学生時代からの同級生。しかし努力肌の勇作と天才肌の晃彦はお互い馬が合わずライバル視していた。しかも晃彦の妻・美佐子は勇作の高校時代の恋人でだった・・・

新社長を殺した犯人は誰なのか・・・とアリバイやトリックなどミステリとして王道な進行ですが、作者の意図は別のタイプの意外性ということだったようで、それがタイトルにもなっている勇作と晃彦の「宿命」なんでしょうね。ラストはビックリ・・・犯人探しやその捜査過程で見えてきた「脳」に関する怪しげな秘密・・・読んでいて飽きさせないです。「殺人現場は雲の上」など軽いタッチの作品もかける東野さんですが、やっぱり本作みたいなずっしり来る物の方が好きです。
2006/7/27読了 ▲リストへ
鳥人計画  ★★★  1989年 新潮社

日本ジャンプ界期待のホープ・楡井明が合宿中に殺されてしまう。死因はアコニチンというトリカブトからとれる毒物。楡井は毎食事にビタミン剤を飲んでいた為、そこで毒入りカプセルと取り替えられたのではと捜査は進む。予想通りアコニチン入りのカプセルが見つかる。死亡した時間から考えて昼食後だと見られるが、同じくホテルで合宿していた関係者のアリバイは完璧で捜査は行き詰ってしまう。そこへ差し出し人不明の犯人を名指しする密告状が送られてきて・・・

ジャンプ界を舞台にしたミステリということで、どうもこのジャンプという競技に馴染めないまま終わってしまった・・・犯人は割りと早い段階で分かってしまいますが、動機や犯行過程は謎のまま進み、しかも犯人が密告者を特定したりと、面白い構成になっていてます。でも途中で何回か入るジャンプの解析表は別にいらないんじゃないかなーという気も^^;犯人が楡井を殺した動機・・・かなり予想外だったけど現実にありそうなことだなー。
2006/8/3読了 ▲リストへ
容疑者Xの献身  ★★★★★  2005年 文藝春秋

弁当屋で働く花岡靖子のもとに元夫の富樫が現れる。富樫は靖子がホステス時代に知り合った男性で、最初は羽振りが良く優しかったものの、会社の使い込みがばれてクビになってからというもの、生活は荒れ暴力まで奮う始末。やっとの思いで離婚したものの、何かというと金の無心をされ、このままだといずれ富樫とは血の繋がらない一人娘・美里にまで悪影響を及ぼしかねないと思っていた。しかしまた性懲りもなくアパートにまで押しかける富樫を靖子親子は衝動的に殺してしまう。そしてその直後、隣に住む高校の数学教師・石神が訪ねてきて力を貸すと言い・・・

草薙刑事&湯川助教授シリーズの3作目。第134回直木賞受賞作です。(ようやくヤッタネ!東野さん!)
好意を抱く隣人が殺人を犯してしまい、その隠蔽を手伝おうとする数学教師の石神。警察はもちろん富樫の足取りなどから靖子が怪しいと捜査しますが、天才的数学者の緻密な計算には叶わず捜査は難航します。表情が読みにくい石神に隠された静かで深い想い・・・それとは対照的にいつもクールな湯川が人間的だなーと思いました。ネタばれ→
石神のトリックは完全に見抜けなかったけど、そういえばいつ犯行が行われたのか日付がないな〜と気になってはいたのです。しかし富樫殺しを隠蔽するために、石神自身がもう1人ダミーとして浮浪者を殺していたとは・・・これによって万が一石神が逮捕されることがあっても自分自身殺人を犯してるわけだから気持ちが揺れない、という保険にもなったわけで・・・ダルマと呼ばれた石神の強い意思と靖子への想い。途中、靖子と工藤がいい仲になった時、石神がストーカーばりに盗撮とかしていて、やっぱり石神でも嫉妬してるんだ〜そりゃここまでして靖子が別の男性に心揺らしていたら怒るかも〜と思っていたら、そんなつまらない嫉妬心ではなく靖子の無実を完全にするためのものだったんだ・・・なんとか2人には幸せになってもらいたいです。
2006/8/24読了 ▲リストへ