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中医学推拿の基本的な考え方や適応疾患

中医学推拿の基本的な考え方について「ギックリ腰」を例題として簡単に説明をしたいと思います。

ギックリ腰とは一般的に重い物を持った時や急な体幹の捻転時におこる急性腰痛を指し、正しくは「急性腰痛症」と言われています。

ギックリ腰による痛みがあると腰部周辺の筋肉が収縮して痛みの拡散を抑えるのですが、収縮しなくてもよい筋肉まで収縮してしまって動きが鈍くなります。

今度は筋肉が収縮して痛みの拡散を抑え続けると筋肉の異常収縮が続くので痙攣が起こり、これがしこりや触ると硬くなっている箇所になる訳です。

異常収縮が続くと痛みの拡散は抑えられますが、血管も圧縮するので血流不足になり、栄養と酸素を運んでいる赤血球の流れが悪化して傷の修復が遅れる事になります。

血行が悪いと修復時間がかかり、神経の圧迫や血流不足により時には痺れの原因にもなります。

このようにギックリ腰は何らかの原因によって腰部が損傷し痛みが発生しています。

推拿療法は上記に記載した事を期に治療を行います。

急性腰痛は筋肉の損傷によるものなのか、骨の損傷によるものなのか、内臓疾患によるものなのか、はたまた気候変化のせいなのか、損傷部位、原因によって治療方法も手技手法も変わります。

こういった総合判断を中国医学では弁証論治(べんしょうろんじ)と言います。

弁証論治で腰痛の原因をつかみ推拿の手技、適切なツボを選び出すところが按摩、マッサージ指圧、柔道整復師(整骨院、接骨院)と大きく違う点です。

痛みによる筋肉の異常収縮が続く場合は筋肉を緩めて痛みを取り、中国医学(以後、中医学)では松筋止痛(そんじんしつう)と言います。

日本語で意味は松=リラックス・筋=筋肉・止痛=日本語と同じ。筋肉を緩めて痛みを取る。

損傷部位を治すのは血液です。

中医学の推拿療法の治療方針を言うと治法:松筋止痛・活血化瘀となります。

松筋止痛は緊張している筋肉をリラックスさせて痛みを取るので優しい手技手法を使い、最も効果的に効果のある場所を選びます。この場所がツボで、専門用語で取穴と言います。

取穴もギックリ腰による痛みの箇所によって選んで取穴をするので微妙に違います。

年齢が上がって腰痛を引き起こす事を中医学では腎虚による腰痛とも言い、腰痛の原因の一つに腎虚があれば腎の元気を上げる事も必要になるので治療方法にも腎臓を補充する意味の補腎が加わります。

ギックリ腰による腰痛に対して大体がこの様に推拿療法を行います。

中医学推拿療法はただ単にギックリ腰に効果があると言う訳ではなくもっともっと奥が深いです。


適応疾患
推拿適応症状をあげてみました。 症状はありませんか?

推拿の症状に対する適応範囲は非常に広く、頭痛 偏頭痛 めまい イライラ 立ちくらみ 肩こり首の痛み、手の痺れ五十肩、肩関節痛 背中の痛み 腰痛 坐骨神経痛 膝痛 膝の腫れ 関節痛 こむら返り 足のしびれ 足のむくみ 足がだるい 顔面神経痛 眼精疲労 鼻づまり 喉の詰まり 顎関節症 美肌 手のしびれ 腕のしびれ 胃痛 お腹の張り 便秘 下痢 生理痛(月経痛) 生理不順 心身症 倦怠感 慢性疲労など外科系から内科系、小児科系と様々な症状に効果が期待できます


項目   推拿適応疾患
 外科系   頚椎疾患・寝違い・肋間神経痛・椎間板ヘルニア・腰臀部筋膜炎・ぎっくり腰・胸腰圧迫骨折・腰仙骨骨格異常・仙腸関節捻挫・梨状筋損傷症候群・大腿挫傷・膝関節創性滑膜炎・膝半月板損傷・膝蓋骨軟骨症・膝蓋脂肪体損傷・足関節捻挫症・偏平足・アキレス腱周囲炎・肩関節周囲炎・上腕骨外上踝炎・テニス肘・橈骨茎状突起部腱鞘炎・手間接捻挫傷と過労損傷・四肢の骨折・ 腹部手術後・胸部手術後・火傷後・急性乳炎・血栓閉鎖性血管炎
内科系 高血圧・虚血性心臓病・慢性気管支炎と肺気腫・胃下垂・胃十二指腸潰瘍・リュウマチ様関節炎・風邪
 神経系 片麻痺・対麻痺・単麻痺・顔面麻痺脳卒中・神経衰弱症
 小児科系  斜視・新生児斜頚・発熱・乳児下痢・小児栄養不良症・上気道感染・小児肺炎・ポリオ・小児おねしょ
 婦人科系  月経困難症・乳癌術後ケア・妊娠中ケア
 その他  頭痛・自律神経失調症(更年期障害)・攣縮(れんしゅく)・ベーチェット病


中医学推拿の歴史・専門的なお話
中医学推拿の歴史

推拿は古代には「按摩」(霊枢・九鍼論)、「按喬」(素問・異法方宜論)、「喬摩」(霊枢・病伝)などと呼ばれていました。

推拿という名称が最初に用いられたのは、明の時代(1571年)の張介賓の「類経」と、同じ時代の「小児推拿秘旨」が最初です。

推拿の源流は按摩ですが、明の時代に推拿と按摩に分かれた事は大きな出来事です。

後に推拿は医学療法としての発展をとげ現在の形になりました。

現在、中国ではいわゆるマッサージ系が「按摩」となり、医療系が「推拿」となっています。
 
マッサージ系「按摩」と、医療系「推拿」の違いとして中国が定めている大きな違いは「気持ちが良いまでとするものを按摩とし、疾患を治療する事を主眼とするものを推拿」として分けています。


推拿の専門的なお話 

推拿は、臨床面においては、多様な理論を持ち、しかも安全性・即効性があることが特徴で、手技医学・手技療法の分野では、推拿がその源流であり、最高峰とされています。

日本の東洋医学と中国医学が違うのは研究費用と研究時間・国家プロジェクト対民間レベルだと思います。
現在は中国政府の後押しで治療効果を裏付ける科学的検証が日本では考えられないくらい進んでいます。

いろいろな意味で中国には沢山の問題を抱えているので全てが良いと私は思いませんが、中国医学に関してはすばらしい発展を遂げ、これからも進化し続けると思っています。

伝統にしがみ付くだけでなく、そこから新しいものを作り出し、伝統と進化の融合が現代中国医学です。

推拿の手技

推拿療法は手を使って皮膚から刺激を通じて、陰陽の調節、経絡疎通、抑鬱開達、気血宣通、活血散瘀、消腫止痛、関節通利、筋骨強壮等、局所および全身の生体機能を調整し病原因素を除去する事を治療の目的としています。

すべての手技療法は、按摩マッサージのようにソフトに軟部組織に手技を用いるものと、カイロプラクティックのように骨関節部に手技を用いるものとに大別されますが、推拿療法はその両面を兼ね備えており、多くの手技療法の長所も合わせ持っています。

数千年の間、先人達の臨床経験と実績を積み上げる事によって現在に至っています。

推拿の強刺激は神経や筋肉を興奮させ、軽く緩やかな手技は神経や筋肉を抑制する効果が実験的に証明されていて、推拿療法は群を抜いて適応範囲が広く、多くの疾患をカバーしているため、中国各地の大学病院の推拿科は外来患者だけでなく、多くの入院患者も受け入れており、整形外科領域の疾患だけでなく、内科系、婦人科系、小児科系などの疾患にも応用されています。

推拿の手技にも沢山の種類があり、手の小魚際の側面を推拿する部位に当て手背を身体の上で転がす一種の手法や、第一指推法のように手首を上げて曲げ、手首の振りによって拇指の指関節を曲げたり伸ばしたりさせて、その功力軽重交互に力を入れて、経絡の穴位に継続して力の作用を与えるものなど様々です。

様々な手技を使って体表、筋部、深部と作用の与える部位を変えています。

具体的には手を使ってツボに作用をかけます。ツボとは経穴とも言います。

実はツボと解剖学はとても密接な関係があります。
五十肩(肩関節周囲炎) 肩の痛みでも取り上げていますが、ツボの下には神経や血管など重要な部位があります。

数千年前から特定の部位(ツボ)を刺激するとその下にある神経や血管が刺激されてその先にある痛みの部位に効果がある事が分かってきて、当時の人達が当時の考え方や覚えやすい名前を付けたのが現在に伝わるツボです。

西洋医学よりはるか昔から人体について研究をしていた証拠ですし、現代医学でツボを詳しく調べてみるとツボの下に神経や血管の分枝があったという事です。

推拿はツボを刺激していますが、現代医学でいうと神経や、血管などポイントに作用をかけている事になります。

単にツボを取るのではなく、日本ではあまり知られていない中国医学の基礎理論を基に取穴するので非常に効果は高いです。

WHO(世界保健機構)が推拿を含む中国医学を認めているのは科学的根拠を基に考えられているからです。

西洋医学と表現の違い、手法が違うだけで人体の捉え方は変わらないです。

下記の表は中医学推拿の作用と西洋医学(整形外科)のおよその治療を比較できればと思い表に表してみました。
中医学推拿の表現は違っても西洋医学と内容はよく似ていると思います。

治療  西洋医学 整形外科  中医学 推拿科 
 1:炎症には

組織が傷つき炎症が起こると治療は炎症を取り除くために安静を指示し、非ステロイド系抗炎症剤を投与。炎症が強いと注射療法。
 1経絡の調整 経路疎通

経絡や経穴を刺激して、経路を疎通させることによって気血の流れを改善し、痛みを軽減
2:痛みには

痛みによって交感神経が緊張、その結果、血管が収縮し、血行障害が引き起こると治療→血行を改善する目的でリハビリテーションとして温熱療法を行う。交感神経の緊張が強いと神経ブロック療法。
 2活血化瘀(かっけつかお)

血液循環を改善し、疼痛を軽減することが出来ます。これを活血化瘀と言います。
組織の修復 
血液の循環を改善し、血流量を増加させて新陳代謝を高め、溜まった組織液や老廃物を取り除き腫脹をひかせ、損傷した組織を修復
3:筋肉に異常収縮(筋肉の凝り)

血行障害によって筋肉が異常に緊張し、筋線維が微細断裂し、発痛物質(ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリン、ブラジキニン、サブスタンスP、プロスタグランジン、ロイコトリエン、k+)が患部に停滞し、さらに痛みが増すと、治療→筋肉の緊張をとるために筋弛緩剤、電気刺激療法や温熱療法、リハビリテーションを行う。
3筋の緊張・痙攣の解除 理筋分筋

痙攣した筋を伸ばし緩和させることで、筋の痙攣を止めることができます。
活血化瘀
血液循環を改善し、血腫(瘀血)を取り除き、疼痛を軽減
組織の修復 
血液の循環を改善し、血流量を増加させて新陳代謝を高め、溜まった組織液や老廃物を取り除き腫脹をひかせ、損傷した組織を修復 
 4:関節拘縮コウシュク(関節が固まる状態)

疼痛が慢性化すると、筋力低下や関節拘縮コウシュク(関節が固まる状態)が出現。治療→筋力低下や関節拘縮に対して外用剤(軟膏)、ストレッチ、筋力強化訓練、関節可動域改善訓練を行なう。
頑固な関節拘縮に対して注射療法。
不安を取り除くために十分なインフォームド・コンセント(説明と同意)を行い、必要に応じて抗不安剤などを投与。
4脊柱・骨盤の矯正 

正骨退行性変化などによって変位した脊椎・骨盤を矯正することが出来ます。 

5陰陽の調和
陰陽調和手技を用いて、崩れた陰陽のバランスを回復
 5:最後の手段?

保存的治療法(手術しない方法)にて、痛みの悪循環が改善しない場合、治療は最後の手段として手術的療法。
術後、骨折回復後の機能改善、にも中医推拿は有効。
西洋医学と中国医学を同時に行なう事は相乗効果を期待できます。 
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