ワイルド・ジャンボa
野良猫ロック

 「野良猫ロック」によって梶芽衣子の虜になった私が、待ちに待った第2弾に狂喜したのは言わずもがなです。実はこの直前に封切られた主演作「怪談昇り竜(石井輝男監督)」も観たのですが、当時の私の純情な感性では、どうも???でしたからねぇ……。

 まあ、それはそれとして、夏休み&同時上映作品が「ハレンチ学園・身体検査の巻(丹野雄二監督)」とあって、劇場は大入りでした――

野良猫ロック / ワイルド・ジャンボ(昭和45年8月・日活)
監督:藤田敏八
製作:笹井英男&岩沢道夫
企画:佐々木志郎
原作:船知慧「破れても突っ込め」
脚本:永原秀一&藤田敏八
撮影:安藤庄平
音楽:玉木宏樹
出演:梶芽衣子(C子)、范文雀(アサ子)、藤竜也
(ガニ新)
■出演:地井武男(タキ)、前野霜一郎(デボ)、和田アキ子
■出演:夏夕介(ジロー)、夏純子、青木伸子、柳美樹
■出演:白木マリ(女医)、内田良平(警官) 他

 前作「野良猫ロック」同様、ホリプロが製作に絡んでいる流れから、和田アキ子の主演作と想定されたものが、諸事情により、基本設定だけは活かしながら全く別なものとなった、所謂スピンオフ物です。

 今回の監督の藤田敏八は脚本にも関与しており、結論から言うと、お得意の集団群像劇の色合が強まっています。つまり今日言われるところの「野良猫ロック=梶芽衣子」という色彩は濃くありません。

 物語は湾岸の街で怠惰な日々を過ごす5人の若者=ペリカンクラブの前に現れた謎の美女、そして企てられる犯罪計画の一部始終を描いています。

 このメンバーが屈折している地井武男、あてどない藤竜也、男勝りの梶芽衣子、銃器マニアの前野霜一郎、煮え切らない二枚目の夏夕介で、謎の美女は范文雀という、なかなか良いキャスト♪ 特に范文雀はハイセンスなファッションで高級車を乗り回したり、白馬を上品に乗りこなすお嬢様系なのに対し、梶芽衣子はほとんど白いジーンズの上下という、着たきり雀状態なのが泣かせます。

 で、彼等は日々、暇を持て余し、対立するチンピラ学生グループの西部会と抗争を繰り返したり、学校のグランドから旧日本軍の銃器を掘り出したりするエピソードが積み重ねられ、そこに范文雀から目をつけられた地井武男がリードして、ある計画を企てるという展開です。

 それは宗教団体・正教学会の総会で集る大金の強奪でした。

 ここから先はネタバレがありますので、もう書きませんが、その過程で見せる出演者それぞれの個性は、なかなか面白く演出されています。

 まず范文雀に篭絡される地井武男の臆病なところは、どしゃ降りの雨の中、どこかの駐車場に入れた高級車の中で烈しいキスシーンも、本音は恐くて夢中になれないところが共感出来ます。また勝てない喧嘩はしないと言いつつ、実は逃げてばかりというあたりも……。

 逆に藤竜也は直情型でありながら熱血が空回りして、いざとなると十八番のゲタゲタ笑い!

 また前野霜一郎は腑抜けのようで、ひたすらに銃器を愛し、夏夕介は二枚目だけが取り柄の存在ですが、とくにかく前野霜一郎のキャラが抜群に立っています。

 そして梶芽衣子は、普段は笑わない女優さんですが、この作品では笑顔がいっぱいという珍しさ♪ 男勝りなキャラの中に子供のような可愛さもあり、メンバーの誰とも恋愛関係になっていないようでいて、実は全員と関係しているような雰囲気が、素敵です。

 実はこの作品には、サイケおやじ的な美味しい場面は無きに等しいのですが、またまた珍しいことに梶芽衣子の白系ビキニ姿がたっぷりと拝めます♪ 場所は葉山の一色海岸でしょう。ついでながら、ここではチョイ役で水着姿の夏純子も登場していますよ♪

 それとリアルタイムで気になったのが、開始から8分目あたりにある車のタイヤ交換の場面で、梶芽衣子の白いジーンズが、彼女の大切な部分に食い込んでいる疑惑が! ここは劇中でもコマ落としの映像なので、どうしてもじっくり観察出来ず、私はリアルタイムで初めて観た日、劇場に居続けを決め込み、3回連続で凝視したのですが……。これはもう、どうしても鮮明画像のDVD化を熱望します! 私は未見ですが、どうやらビデオ化はされているらしいので、お持ちの皆様はぜひとも観察してみて下さいませ。

 また彼女の歌が泣かせます。それはギターの弾語りという演出で「淋しくなったら海に来て、お前を偲んでつまびくの」と、いくぶん細い伸びやかな声で歌われると、周りはすっかりしみじみモード、梶芽衣子色に染まるのでした。現在では梶芽衣子=怨み節という構図になっていますが、こういう胸キュン歌謡フォーク路線も魅力たっぷりで、これは次回作「セックスハンター」へと受け継がれます。

 ちなみにこの曲も含めて「野良猫ロック」関連のサントラは、「野良猫ロック・日活ニューアクションの世界(Soild CDSOL-1101)」というCDに纏められています。ここでの歌は、スバリ「C子の唄」とタイトルされました。もちろんオリジナルのフィルム音源が嬉しいところ♪

 さて、この作品での和田アキ子の扱いですが、全てが前作「女番長・野良猫ロック」からのフィルムを使いまわしていますし、当然、登場場面も非常に少なく、脈絡が無いと言えば、それまでの雰囲気です。ただし劇中では「ボーイズ&ガールズ」と「どしゃぶりの雨の中で」という、彼女の持ち歌が使われています。

 さらに脈絡が無いと言えば、何と当時の新人男性アイドル歌手でトップを争っていた野村真樹(現・将希)とにしきのあきら(現・錦野旦)の2大スタアが登場! これもポリプロ製作という中でのシガラミか否か、分かりませんが、ここでは2人が映画のロケ撮影をやっているという設定で、その背後にペリカンクラブの連中が入り込んで本番撮影をメチャクチャにするという、自虐的なギャグが痛快です。

 ちなみに当時の芸能界では、ここに出演している夏夕介を加えた3人が「スリーN」として売り出されていましたが、夏夕介は元々は和田アキ子の大阪時代のバンドであるグランプリーズのキーボード奏者であり、後にオックスに入った田浦幸です。そして後年、テレビドラマ「愛と誠(東京12チャンネル=現・テレビ東京)」で大ブレイクするのは、皆様ご存知のとおりです。

 というように、この作品はかなり芸能界どっぷりの中で作られた雰囲気ですが、特に主役を設定せず、何とも言えない倦怠感が漂う仕上がりは、藤田敏八監督が後々まで多用する作風です。それゆえにギラギラした梶芽衣子をお目当てにするとハズレるのですが、藤田敏八監督にしても長谷部安春監督と同じ作風では作れないわけですから……。

 ただしクライマックスで血まみれになって逃亡する梶芽衣子の熱演には、やっぱりグッときます。またラストシーンでの水着姿の范文雀には、藤田監督が十八番の無気力節が存分に出た名場面だと思います。

 そしてこの作品には、後年、とんでもないオマケが付きました。

 それは昭和51年3月23日、ここに出演していた前野霜一郎が自ら操縦するセスナ機で、右翼の大物=児玉誉士夫の自宅に特攻したという昭和の大事件です。しかも直前には、日の丸の鉢巻に当時の飛行服という完全な姿で記念撮影までしていたのです。

 もちろん児玉誉士夫は、当時の「ロッキード事件」に絡んで起訴されたばかりでした。

 さらこの裏には、昭和49年に製作・公開された東映作品「あゝ決戦航空隊(山下耕作監督)」で児玉誉士夫を演じていたのが、日活黄金期の大スタアである小林旭という因縁もあり、子役時代からロマンポルノ期まで、多くの日活作品で活躍していた前野霜一郎としては、さらなる義憤が爆発したという見方さえ出来ます。

 実際、リアルタイムで事件を知った当時の私は、この作品のクライマックスで機関銃を撃ちまくる前野霜一郎の姿が、完全にオーバーラップしていました。当に原作の「破れても突っ込め」をやってしまったのです。

 ということで、様々な見所があるこの作品ですが、現代の感覚からすると少し温〜い雰囲気が、当に1970年代初頭! 仲間意識とか連帯なんていうものが少しずつ薄れていった当時のやるせなさが、存分に出ていると思います。

 その中で、超ミニスカで美脚を惜しげもなく披露する范文雀♪ そのパンツ見せギリギリの素晴らしさが、いつまでも心に残るのでした。


参考文献:Hotwax Vol.1 & 2 (ウルトラ・ヴァイヴ)

(2006.08.18 敬称略)