子犬の社会化

1960年代初期よりアメリカなどでは、子犬の発育段階の研究が行われており
現在では子犬の発育は次の4段階に分けられると考えられています。


                   新生子期:誕生から約2週齢
                   移行期:2〜3週齢頃
                   社会化期(感受期):3週齢〜12週齢頃もっとも社会化が起こりやすい時期
                   若年期:12週齢くらいから性成熟まで

通常は、ブリーダーなどから生涯をともに過ごす「飼い主さん」のもとへ子犬が渡されるのは
生後2〜3ヶ月(8〜12週齢)ぐらいが通常だと思います。
多くの場合、ブリーダーなどのもとで「新生子期→移行期→社会化期」という大事な時期を過ごします。
この社会化期までの段階で、子犬は生物体としての自己を認識し
母犬や兄弟姉妹犬との関わりから犬同士のコミュニケーションを学びます。
母犬の庇護のもと、これから生きていく人間を含む社会とうまく付き合っていくため
重要な情報を学び取っていきます。
子犬が家族の一員として家庭に迎えられるころには、
犬の心の形成に重要な時期は終わりかけているということです。
子犬の社会化は飼い主さんの問題だけではなく、
ブリーダーの責任も重要です。

新生子期

誕生から目が開くまでの生後2週齢くらいまでの時期です。
目も見えず耳道も開いていない状態で生活のほとんどを母犬に依存しています。
子犬たちは自分で排尿・排便ができないため、母犬が子犬の肛門や生殖器付近を舐め排泄を促します。
生後1〜5日目くらいまでは、母犬の乳頭を捜すのは、空腹などに関係なく、
主に嗅覚と反射のよる行動です。
生後6日齢くらいになると、主に触覚と嗅覚によって環境を感じています。
感覚神経は発達途中ですが、この時期の周囲の環境が神経系の発達に影響すると言われています。
耳道や目は閉じているにもかかわらず、音や光を伴う刺激は脳の発達に良い影響を与え、
感覚および運動の発達を促進します。
さらに触れたり、撫でたり、抱っこする刺激によって、刺激に過剰に反応することも少なくなります。
人間が積極的に子犬たちに関わっていくことは、
その犬の心の形成に良い影響を与えると考えていいでしょう。

移行期

生後2〜3週齢の頃で、自分で行動ができるようになり
目が開き、耳道が開き、排泄も自分でできるようになります。
四肢で体を支えて自分で歩けるようになります。子犬同士のじゃれ合いなどの交流が目立つようになります。

社会化期

生後3〜4週齢に始まり、犬種差や個体差にもよりますが、だいたい12〜14週齢で終わります。
自然の状態であれば、この時期はまだ母犬の庇護がある時期です。
いつも母犬がそばにいてくれるため安心して、
好奇心の趣くままにいろいろなことを探求し、学び取っていきます。
この時期が、犬たちの一生のなかで最も「社会化が起こりやすい」時期になります。
社会化とは、「子犬が犬や人間の社会に対して慣れ親しむこと」を言います。
「社会化」を「社会化しやすい時期」と思われている方もいますが、
社会化は子犬や飼い主がするものではなく、自然に身につくものだということを覚えておきましょう。
社会化期は、別名「感受期」とも言われます。
子犬が最初に学習しなければならないことは、犬社会への適応です。
子犬同士で遊びながら、どのくらいのアゴの力で咬めば痛くなく、
楽しく遊びが続けられるのかを学習しながら、「咬みつきの抑制」などを習得していきます。
その際、母犬の教育的指導はとても大事になります。
5週齢くらいまでは、母犬は子犬が何をしても怒りませんが、
それ以降になって子犬の悪ふざけが過ぎると「ガーッ」と怒ります。
すると子犬は、母犬に対してお腹を見せて「ごめんなさい」をします。
この「ごめんなさい」は、母犬からしか教えられない行為です。
なぜなら、自然界で母犬以外の動物の前でお腹を見せるということは
相手に捕食されることを意味するからです。
こうした犬社会の社会的儀式を学ばせてくれるのは、通常は母犬だけです。
犬社会には人間が教えられないことがたくさんあるため、
母犬や兄弟姉妹犬との十分な生活期間が必要です。

犬社会だけではなく人間の暮らしにも慣れさせる

子犬はこれから人間社会で生きていくわけですから、人間との付き合いを覚えることが重要になってきます。
万が一、犬社会とうまくつきあえなくても、人間と良好な関係が築けるのであれば、
その犬は幸せに暮らせるのです。
しかし、一日のほとんどを犬舎(ケージ)の中で過ごさせる場合は、
犬社会とのふれあいは十分にあっても、人間の暮らしとの接点が不足する傾向があるようです。
人の会話や食器を洗う水の音、掃除機やテレビの音といった、普通の家庭の音を聞く機会が多くありません。
社会化期が過ぎてから新しい飼い主の家に来て初めて聞く日常の生活音に、
恐れおののいてしまう子犬がいるのはそのためです。
大事なのは、子犬が将来遭遇するかもしれない刺激に対して、
怖がらないように自然な形で出会わせてあげることです。
社会性を身につけないまま育った犬は、新しい環境に対して過敏になり、
臆病な犬や攻撃的な犬になりやすくなります。
社会化は、犬の将来を大きく左右すると言っても過言ではありません。

社会化が継続する「若年期」

生涯をともに過ごす飼い主さんのところへやってきた子犬には、
引き続き社会化のトレーニングを行い、
さまざまな環境で良い体験を子犬にさせることが必要です。
子犬が家にやってきたら、感染症の予防ワクチン接種を行います。
通常、1回目を8週齢(生後2ヶ月)くらい、2回目を12週齢(生後3ヶ月)で打つことが多いようです。
その後1〜2週間で抗体ができますが、それまでは感染症に感染する恐れがあるので、
ほかの犬と遊んだり、散歩などに連れ出したり、地面を歩かせないほうがいいとされています。
ワクチンを打って体の免疫ができるまで外部との接触を完全に控えていては、
社会化のチャンスを逃してしまうことになりかねません。
社会性が十分に身についていないと、新しい刺激や状況に対するストレスや不安の度合いを高めることがあり
神経質になったり、恐怖心から良く吠えたり、攻撃性の高い犬になることがあります。
さらにそれが進むと、病的な不安症や恐怖症を引き起こす要因になることもあります。
心と体の健全性は、どちらも子犬の将来に関わる重要なことです。
「ワクチン抗体ができるまでは」
抱っこして、ベランダや玄関先から外の世界を見せたり、音を聞かせる。
玄関先で抱っこしたままご近所の人に挨拶する。
抱っこしたまま、近所をぐるりと回ってみる。
など試してみるのも良いのではないでしょうか。

子犬に無理をさせない範囲で世界を広げてあげよ

ワクチン接種か完了したら、徐々に行動範囲を広げていきます。
近所の公園などの新しい環境で飼い主さんがおやつをあげてみるのも良いでしょう。
そうすることにより「お散歩(お外・新しい環境)=楽しい」と関連づけることができます。
おやつを食べないようなら、それは不安になっていて、食べる余裕がないということです。
無理強いしないで、早々に切り上げます。
外で食べるか食べないかは「不安のバロメーター」になりますので、
無理をさせないレベルで、すこしずつ行動範囲を広げてあげるとよいでしょう。
ひとり暮らしや共働きの飼い主さんは、どうしても夜の散歩が多くなりがちですが、
明るい時間帯と暗い時間帯では、同じ場所でも景色が違って見えるものです。
週末だけ日中の散歩に行っていたとしても、子犬は1週間ぶりだと忘れてしまいます。
1回分は短時間でいいので日常的に明るい時間にも散歩に連れ出しましょう。
また、最近は高層マンションで犬を飼育する家庭も増えてきました。
3階以上になると、人の話し声や車の音などの外の喧噪が聞こえにくくなります。
共用廊下がないような造りのマンションでは、人の歩く音や話し声も聞こえません。
こうした環境で飼育されている犬は、他人や物音に対して過剰に反応するようになります。
短時間でもよいので、1日に何回か地上に連れ出して、
外を見せる練習を注意深く行うとよいでしょう。

社会化のメリット

一般的に、母親から受けるべき庇護を受け、社会化を身につけた子どもは、
そうでないものよりストレス耐性があり、疾病・死亡率も少ない傾向があるという報告があります。
そして人間社会に対して社会性を身につけている犬は、
問題行動が減り、飼いやすい犬として家族はもちろん
周囲の人からも愛される犬に育つ可能性が高くなります。
犬自信も余計なストレスを感じることが少なく、伸び伸びと生きることができます。

社会化」クエスチョン

犬の社会化ってなに?

社会化の定義は「子犬が犬や人間の社会に対して慣れ親しむこと」
犬社会のルールを学び、ほかの犬がいても緊張せずに過ごせるようになることが第一歩です。
同時にこれから長い人生を人間社会で暮らしていくわけですから、
人間との生活に馴れる「馴化」も必要となります。

犬種による違いはあるの?

普通、犬は8週齢を超えると、危険回避行動(警戒心)が芽生え始めます。
犬種によってその時期には差があります。
警戒心が芽生える時期が早くやってくるのは、牧羊犬や日本犬の仲間です。
レトリーバー種などのガンドッグ(鳥獣犬)は遅めのようです。
牧羊犬、護羊犬など、警戒心を強化された犬種は、
社会化の起こりやすい期間が短い傾向があるようです。

ドッグランに行けば社会化になるの?

多くの犬が集まるドッグランは、子犬の社会化にもある程度は有益ですが、
いくつかの注意も必要です。
例えば、ドッグランでの他の犬との交流が楽しすぎると、
飼い主さんよりも犬同士の関係を重視することがあります。
犬同士のほうが楽しく、飼い主さんへの関心が低くなった犬は、呼んでも帰ってこないなど、
飼い主の言うことを聞けない犬になることがあります。
犬社会への適応も大事ですが、それ以上に重要なのは、、人間社会との適応です。
犬との社会性はあくまでもプラスアルファーのお楽しみと捉え、
まずは飼い主さんと遊ぶのが好きな犬に育てましょう。
何よりも人間と良い関係を築くことが大切です。

「1歳以上の成犬と暮らす飼い主さんへ」

成犬になってからも必要な社会化トレーニング

犬種差や固体差はありますが、1歳になるころにはそろそろ成犬期に入ります。
一般に小型の犬のほうが早く成熟し、大型の犬が成犬になるのは1歳半から2歳とも言われています。
社会化は、社会化期にいちばん起こりやすいものですが、そこで終わるものではありません。
1960年代にアメリカで行われた研究では、社会化期に人間社会へのトレーニング行った犬を、
その後犬だけの暮らしをさせたところ、人間とのコミュニケーションがうまくとれなくなったそうです。
犬の社会化というのは、生涯継続するものではありません。
まずは成犬になるまでの1年間が大切ですが、
それで終わることなく、その後もずっと続ける必要があります。
その時期、その年齢に適した環境でよい経験を積ませることが大切です。
一方、社会化が出来なかった犬であっても、成犬になってから社会性を身につけることはできます。
警戒心が強くなるため、子犬のときよりも時間はかかりますが、忍耐強く社会化トレーニングをしていきましょう。
コツは子犬のときと同じで、「無理強いせずに、自然に良い体験をさせること」です。
そもそも犬が「怖い」と感じる感情は、生命生存に関わる本能から起きているものです。
そのため、命に関するものはすぐに覚え、その後も根強く意識するようになります。
たとえば車に乗るのが嫌いな犬がいるとします。
飼い主さんは一緒にいろんな場所に連れて行きたいと思い、無理やり車に乗せようとしますが、
犬はさらに車嫌いになったり、飼い主さんまで嫌いになることもあります。
犬には「車嫌いを克服しなければ」という気持ちはありませんので、
犬が学習してしまった悪い体験を、飼い主さんが良い印象に変えさせなくてはなりません。
そのためには時間が必要ですが、気長に少しずつハッピーな気持ちになるように仕向けていきましょう。

犬の性格を尊重して人も犬もハッピーライフ

社会化トレーニングによって犬の心の許容量を広げることは可能でも、
その犬本来の性格は変わらないということです。
犬にも人間同様に個々のキャラクターがあり、
もともと社交的で楽天的な犬もいれば、引っ込み思案な犬もいます。また、気の合う犬もそうでない犬もいます。
つまり、他者に迷惑をかけるような攻撃的な性格は治したほうがいいけれど、
その犬本来の性格以上にフレンドリーな犬を目指す必要はないのです。
犬同士がすれ違うときに、平常心ですれ違うことかできればそれでよいのではないでしょうか。
愛犬の性格を理解し、それを認めてあげることも大切です。

社会性を身につけていないのは、犬にとってつらいこと

子犬の生後3週齢〜12週齢くらいを指す「社会化期」は「感受期」とも言われ、
この時期に経験したことは、
その後の犬の性格形成に大きな影響を与えるといわれています。
つまり、良い経験を積み重ねることができた犬は、
何事にも積極的で、どんな相手とも友好的に付き合うことができます。
一方、良い経験を積めなかった子犬はそれがトラウマとなり、警戒心の強い臆病な犬になりやすいのです。
そのため社会化期で大事なのは、
将来出合うかもしれないさまざまな「刺激」に対して、飼い主さんが自然に出会わせてあげることです。
無理強いせずに、段階を踏んでいろいろな経験をさせてください。
では、社会性を身につけることが出来なかった犬はどうすればよいのでしょうか。
そうした犬は、知らない犬や人間に会ったり、初めての場所に行ったり、新しい出来事が起きたりするだけで、
怖くて怖くてたまらないのです。
犬の社会化不足は問題行動の原因となり、飼い主も困る場面がありますが、
それ以前に犬にとっても大変つらいことなのです。
しかし、社会化期を過ぎてるからといってあきらめるのは時期尚早です。
犬は一生学習することができる動物です。
トレーニングや行動治療、サプリメントや投薬治療により、愛犬の不安を減らすことができます。
まずはかかりつけの動物病院に相談してみてください。



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