「愛犬と飼い主の感染症」予防学
今、多くの犬が家族の一員として迎えられ、深い愛情を受けています。
しかし、そうした中で危惧されているのが、「人獣共通感染症」です。
人獣共通感染症とはどのようなもので、どんな種類があるのか、何が危険で、どう防げばよいのか・・・・・・・
人類と犬が共に不幸な状況に陥らないために、
人獣共通感染症について正しく理解し、愛犬との適切な接し方を身につけましょう。
犬は人間社会で欠かせない存在になっています。
さらに密接になった人間と犬との関係
犬の祖先であるオオカミは、40〜30万年も前から人と共に暮らすようになったと考えられています。
人間社会の中でオオカミから犬へと進化し、高いコミュニケーション能力を身につけ、
長い間、番犬や狩りのパートナーとして人間の役に立ってきました。
そして現代社会において、人間と犬の関係はより密接になってきています。
ペットやコンパニオン・アニマルとして、文字通り犬と人間は同じ屋根の下で暮らすようになり、
物理的にも心理的にもとても身近な存在となったのです。
愛犬が人間にもたらす3つの効用
犬などの動物が身近にいることで、人間にはさまざまな効用がもたらされていると考えられます。
第一は、心理的・精神的なもので、ストレスが解消される、癒される、元気になる、楽しい、
動物に必要とされることで自尊心や責任感が生まれる、孤独感がなくなる、といったことがあります。
第二に社会的な作用として、犬がいることで他の人との会話や関係が生まれるということがあります。
そして第三に、生理的・身体的な作用があげられます。
犬を散歩に連れて行くことで自分自身の運動になる、散歩や餌やりで生活リズムが整う、
ストレスが解消されて心身によい影響を与えるといったものです。
だから、「愛犬からの感染症」について理解
知るワクチン≠ェ必要になるのです。
犬と人は、まったく別の動物
愛犬がどんなに可愛くても、犬は人間とは動物学的に異なります。
そのことをよく理解したうえで愛犬と接しないとさまざまな問題が生じかねません。
たとえば、愛犬に人間と同じ食べ物を与えれば、塩分や糖分、カロリーなどの過剰摂取になったり、
体に毒を及ぼす食べ物を食べさせることになって、著しく健康を損ねてしまいます。
ほとんどの飼い主さんはこうした食事に関する注意は怠らないとは思いますが、
忘れてならないのが「愛犬からの感染症」です。
接し方によっては愛犬から感染症がうつり、飼い主さんも愛犬も不幸に状況に陥ってしまう可能性がありますから、
正しい知識、知るワクチンを身につけておくことが大切です。
愛犬からの感染症「人獣共通感染症」とは
感染症は、病原性の微生物(病原体)の感染によって起こる病気です。
人間や犬の体内にはいろいろな微生物が存在しており、人間と犬とでは体内の微生物の種類は異なります。
そのため、人間と犬との間で微生物が行き来をすると、感染症にかかってしまうことがあるのです。
人と犬などの動物の間でうつる病気のことを、「人獣共通感染症(あるいは人畜共通感染症)」といいます。
WHO(世界保健機構)は、
「人間と脊椎動物の間を自然に行き来することができる感染症」と定義しています。
知るワクチン@ 世界の人間と動物の感染症事情について知っておこう。
| 日本であった事例 | |
| 狂犬病 海外で犬に咬まれ感染した人が、 日本に帰国して発症、死亡。 |
Q熱、パスツレラ症、猫ひっかき病、 カプノサイトファーガ・カニモルサス 感染症、コリネバクテリウム・ウルセ ランス感染症 犬、猫が普通に持っている病原体で、 過度の密接な接触によって感染。 |
| オウム病 展示施設の従業員で集団発生。 |
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| エキノコックス症 キタキツネの糞で感染して 20年後に発症。 |
サルモネラ症 ペットのミドリガメやイグアナ等の爬虫類 から子どもが感染し、重症に。 |
| 腸管出血性大腸菌感染症 触れ合い動物施設に来場した人で集団感染。 |
日本紅斑熱 温暖な太平洋沿いでダニに咬まれて発症 春と秋が発生のピークに。 |
| アジアであった事例 | |
| レプトスピラ症 洪水後、川で泳いで不明熱、感染源 はネズミ由来の細菌。 |
テング熱 流行地域に滞在中に蚊に刺されて ウイルスに感染し発熱、まれに重篤 になることもある。 |
| 鳥インフルエンザ 鶏での感染がアジア、ヨーロッパ、 アフリカ等に拡大し、感染した鳥と、 濃厚に接触した人が感染し死亡。 |
チクングニア熱 流行地域で蚊に刺されることにより 感染する。感染地域もアフリカ、 南アジアから東南アジアへと拡大している。 |
| ニパウイルス感染症 オオコウモリのウイルスが豚に感染ご、 人が豚から感染して脳炎で死亡。 |
腎症候性出血熱 ネズミが病原体を保有し、発熱、出血傾向、 腎障害を特徴とする風土病として ユーラシア大陸各地に定着。 |
| 狂犬病 犬に咬まれて感染発生し、死亡。 |
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| 北アメリカであった事例 | |
| 狂犬病 コウモリから感染して発症後に死亡。 まれに、発生したアライグマやスカンク に咬まれて感染。 |
ハンタウイルス肺症候群 致死率の高い呼吸器感染症、野生ネズミが 感染源。 |
| ペスト 野生リス、プレイリードッグが感染、 死亡者もいる。 |
Bウイルス病 一部のアジア産サルにかまれ、唾液に潜んで いた致死性ウイルスに感染。 |
| ウエストナイル熱 蚊が媒介するウイルス病、カラスの不明死 に次いで人での発症。 |
サル痘 アフリカから輸入したげっ歯類から プレイリードッグ感染し、さらに人へ。 |
| 中南米であった事例 | |
| 黄熱 サルでの流行が見られる森林地帯で、 感染サルを吸血した蚊に刺された人が 感染。 |
狂犬病 吸血コウモリに咬まれて感染した人や家畜が発症 して死亡。まれに、野生のサルも発症。 |
| ヨーロッパであった事例 | |
| サルモネラ症 爬虫類のペットから、乳児が感染して 死亡。 |
野兎病(やとびょう 感染地帯で、野ウサギやダニから感染して死亡。) |
| ダニ媒介脳炎 中欧で森林散策した後に、高熱を出 して死亡。 |
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| オーストラリアであった事例 |
| リッサウイルス感染症 ヘンドラウイルス感染症 コウモリ由来の新たなウイルス感染症により死亡者発生。 |
| アフリカであった事例 | |
| エボラ出血熱 マールブルグ病 サルから感染した後に、人から人へ体液から 感染。 |
クリミア・コンゴ出血熱 動物やダニから人が感染した後に、人から 人へ院内感染。 |
| サル痘 人がサルやリスなど野生動物から感染すると、 天然痘に似た症状。 |
ラッサ熱 西アフリカでネズミが媒介する病気。 患者は毎年30万人。 |
| 中近東であった事例 | |
| ブルセラ症 牛等の家畜に触れたり、未殺菌乳を飲んで 慢性感染。 |
炭疽(たんそ) もともと病原菌は土壌に長期生存し、感染した 動物から人が感染。 |
復活する感染症、新しい感染症
人類は、常に感染症と闘ってきました。かつては病気のほとんどを感染症が占めており、
人獣共通感染症の歴史も、家畜として犬を飼い始めたときから始まっています。
好征部室やワクチンの開発・普及、衛生環境の改善、栄養状態の向上、、医療技術の発展などにより、
一時は感染症の種類も減りましたが、最近になって再び感染症が問題になっています。
現在問題になっている感染症には二つのケースがあります。
一つは一度勢力が弱まったものの、再び発生した感染症で、
結核やマラリヤ、テング熱、コレラ、赤痢などがあります。
そしてもう一つは新たに発見された感染症のグループで、
HIV(エイズ)やエボラ出血熱、腸管出血性大腸菌O−157などがあります。
現在、特に問題になっているのが、新たに発見された感染症です。
この新たに発見された感染症を新興感染症といいますが、
その多くが動物から感染する人獣共通感染症であることがわかってきました。
野生動物との接近が感染症の増える原因に
ここにきて新しい感染症が増えてきた背景には、地球規模での社会情勢の変化があります。
輸送交通機関の発達により、人も物も簡単に国際移動することができるようになったこと、
人口増加や都市化により、自然環境が大きく破壊されてきたことなどが関係し、
人間と野生動物の距離が接近し、
野生動物が持っていた病原体が人に感染するようになったからだといわれています。
知るワクチンA 日本でも人獣共通感染症が増える可能性があります。
人獣共通感染症が少ない国、日本
現在、地球上には800種以上の人畜共通感染症があいます。
そのうち、100種類以上をWHOがとくに危険だとみなしていますが、この数は年々増えています。
一方、日本国内に存在している人充共通感染症の数は、世界のほかの地域と比べて少ないといわれています。
その要因として
@島国で陸上動物が侵入しにくい
A人獣共通感染症は熱帯や亜熱帯の地域に多く、日本が位置している温帯にはもともと少ない
B狂犬病対策や家畜の衛生管理などが徹底されている
C国民全体の衛生観念が発達している
今後は人獣共通感染症が急増する可能性も
しかし、日本でも現在は人充共通感染症の危険性が高まりつつあります。
その要因として、次のことがあります。
1動物側の要因
@野生動物をペットとして飼うようになった
Aペットブームによって、動物を飼育する人の数、飼育される動物の数が増えた
Bペットの小型化により、室内でペットを飼うようになった
2人間側の要因
@高齢化社会になり、老化や病気で免疫力が低下している
A家族としてペットを飼うようになり、抱き上げたりしてペットと密接な関係を持つ人が増えた
3環境要因
@輸送交通機関の発達により、病原体が国内に侵入しやすくなった
A機密性の高い室内で、24時間ペットと一緒に過ごすようになった
知るワクチンB 人獣共通感染症の感染経路を知って予防する。
人獣共通感染症の主な感染ルートはこの4つ
人獣共通感染症の感染経路には、次のようにいくつかのルートがあります。
@接触感染
病原体を持っている動物の体に触れることで病原体が人の体内に侵入して感染
A咬傷感染
病原体を持ている動物に咬まれたりひっかかれたりして感染するもの
3経口感染
動物が持っている病原体よって水や食べ物が汚染され、それを飲食することで感染するもの
C空気を介する感染
病原体を持っている動物が咳やくしゃみをして病原体が浮遊、それを吸い込んで感染するもの
知るワクチンC 感染を予防するのは、日常習慣からです。
日常生活の注意で感染は予防できる
感染症は、感染源・感染経路・感受性集団の3つが揃って始めて感染します。
愛犬から人間への感染は、愛犬が何らかの感染症にかかっている、または問題となる微生物を持っている・
接触や咬傷、経口、経気道などの感染経路がある・飼い主が感染症にかかりやすい状況にある、
という3つの条件が必要になるということです。
つまり、これらの条件のうち、どれか一つでもなくすことができれば、
愛犬からの感染を予防できるので、決して不可能なことではないのです。
ワクチンや定期健診で、愛犬を感染症から守る
愛犬の対策として、まずは狂犬病予防ワクチンを必ず接種します。
また、義務ではありませんが、犬用混合ワクチンの中には
レプトスピラ症のワクチンが入っているものがありますので、
地域での流行が心配な場合は獣医師に相談して接種しておくと安心です。
また、1歳未満の幼犬では、獣医師による定期的な検便と駆虫が必要です。定期的に健康診断を受けましょう。
そのほか、咬まない、飼い主をむやみに舐めないよう躾をすることも大切です。
飼い主にとって効果的な感染予防
飼い主自身も感染症から自分のみを守るためには、「愛犬は人間とは別の動物だ」
ということをしっかりと理解し、愛犬との適度な距離を保つことが必要です。
口移しで食べ物を与えない、一緒に寝ない、一緒にお風呂に入らない、
動物に触れたら必ず手を洗いうがいをする、食べ物のある場所へは連れて行かない、
愛犬に飼い主の体を舐めさせないのが基本原則です。
特に高齢者や子ども、持病があるなど、免疫力の低下した方は、
感染症にかかり重症化する可能性がありますから、十分に注意しなければなりません。
環境を整えて感染リスクを減らす
飼育環境を清潔に保つことが第一です。
食事や水を置きっぱなしにしない、すぐに糞尿の始末をする、室内はこまめに掃除する、
寝室やキッチンなどに犬が入れないようにするといったことを日々徹底しよう。