
就業規則の基礎知識
就業規則作成・変更その前に!
事業主と労働者個人の労働紛争の約90パーセントは、就業規則の未整備に起因しているといわれています。労働事務所や労働基準監督署への相談・申告、紛争調整委員会のあっせんが増える中で、労使双方にとって無駄な紛争を避けることは重要です。就業規則は職場の実態に則したものでなければなりません。出来合いの就業規則をそのまま利用しても、就業規則の整備が十分とは言えません。「会社を設立したので就業規則を作成される方」、「従業員を雇い入れたので就業規則を作成される方」、「就業規則を作っていなかったので作成される方」、「会社の実態に合わせて就業規則を変更される方」、「法律にそぐわなくなった就業規則を変更される方」など、事情は様々だと思いますが、ぜひこの機会に貴社の就業規則を職場の実態に合った適正・適法なものにしてください。
就業規則って何?
一般的に企業は、複数の労働者を継続的に雇用し、これらの労働者を一定の秩序のもとに就業させることにより成り立っています。そこで、労働者を秩序づけ、組織的に就業させるために、職場の組織を明確にし、服務規律とその違反にたいする制裁措置を設ける一方、賃金、労働時間その他の労働条件についても体系的に定めておく必要があります。このような必要性から、労働者が遵守すべき服務規律や労働条件を体系的・統一的に定めたものが、就業規則です。つまり、就業規則は職場の憲法・法律ということになります。ルールのない組織・社会は無法地帯ということになります。もちろん暗黙のルールというものもあるでしょうが、利益が相反することも多い労使間においては、たびたび紛争の原因となります。
就業規則の作成
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して、遅滞なく所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。就業規則を変更した場合も同じです。(罰則 30万円以下の罰金)常時10人以上の労働者を使用は就業規則の作成・届出義務の条件であり、常時10人未満の労働者を使用する場合であっても、就業規則の意義からいって、就業規則を作成することが望ましい。 就業規則の作成・届出単位は事業場単位と解されています。たとえ同一企業内であっても、事業場を異にする場合は、それぞれの事業場において常時10人以上の労働者を使用するかぎり、事業場ごとにそれぞれの就業規則を作成し、届け出なければなりません。
就業規則の手続
就業規則の作成・変更にあたっては、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければなりません。(罰則 30万円以下の罰金)また、所轄労働基準監督署長への届出の際は、この意見を記した書面を添付しなければなりません。
意見の聴取は、必ずしも労働者の同意を必要とはしません。労働者側が反対の意見を表明した場合であっても、使用者は、労働者側に反対の旨の意見書の提出を求めて、これを添付すればよいのです。
ただし、労使で就業規則の内容については十分に協議し、労働者側の理解を得ることが望ましいのはいうまでもありません。
就業規則の周知義務
作成した就業規則は、以下の方法により、労働者に周知させなければなりません。(罰則 30万円以下の罰金)
・常時、各作業場の見やすい場所に掲示または備え付ける。
・書面を労働者に交付する。
・磁気ディスクなどに記録し、なおかつ各作業場に、この記録を常時確認できる機器を設置する。
つまり、労働者が、いつでも自由に、就業規則の内容を確認できるようにすることが必要です。
就業規則の記載事項
就業規則の記載事項には、労働基準法上必ず定めなければならない必要的記載事項と、使用者が自由に定めることができる任意的記載事項があります。さらに必要的記載事項は、必ず就業規則に記載しなければならない絶対的必要記載事項と、なんらかの定めをしたときは就業規則に必ず記載しなければならない相対的必要記載事項に分かれます。それぞれに分類をすると以下のとおりです。
絶対的必要記載事項
・始業および就業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合の就業時転換に関する事項。
・賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の時期ならびに昇給に関する事項。
・退職に関する事項。
つまり、労働時間、休憩、休日、賃金、退職に関しては、就業規則に必ず記載しなければならないということです。
相対的必要記載事項
・退職手当の適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払の方法ならびに退職手当の支払の時期に関する事項。
・臨時の賃金等(退職手当を除く)および最低賃金額に関する事項。
・労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項。
・安全衛生に関する事項。
・職業訓練に関する事項。
・災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項。
・表彰および制裁の種類および程度に関する事項。
・事業場の労働者のすべてに適用される事項。
任意的記載事項
使用者は、法令、公序良俗または労働協約に違反しないかぎり、いかなる事項についても自由に就業規則に定めることができる。
就業規則の適用
退職に関する適用
退職に関する事項という場合の退職には、解雇も含まれます。したがって、使用者としては、労働者をどういう場合にどういう手続で解雇するのか、就業規則に記載しておかなければなりません。また、これを定めた以上は厳格に運用しなければなりません。
たとえば、就業規則の中で一定の解雇事由を記載した後に、「その他やむをえない事由がある場合」とか「その他前各号に準ずる場合」というような一般的・包括的な規定を設けているのが通例ですが、この場合でも、限定列挙した解雇事由との関連において適用すべきです。もし解雇事由としたものが客観的にみて相当でなく合理性を欠く場合は、解雇は無効となります。
制裁に関する適用
制裁規定についても、解雇の場合と同様、その運用は厳格にしなければなりません。懲戒事由・手続が就業規則に定められていれば、これに従わなければなりません。また、懲戒の程度・方法も客観的に妥当なものでなければなりません。
制裁規定の制限
使用者が就業規則に定める制裁は、減給のみではありませんが、減給の額によっては労働者の生活に大きな影響を与えることから、とくに労働基準法において減給の額に制限が設けられています。
・1回の違反行為に対する減給の額は平均賃金の1日分の半額を超えてはならない。
・減給の額の総額は1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。
大企業の不祥事の時に、「3ヶ月間、役員報酬の20%カット」などと報道されていますが、これは彼らが労働者ではないからです。
就業規則の効力
就業規則と法令・労働協約の関係
就業規則が法令や労働協約に反する場合は無効となります。ただし、その就業規則が、すべて無効となるのではなく、違反する部分についてのみ無効となります。
就業規則が法令や労働規則に反する場合、所轄労働基準監督署長はその変更を命ずることができます。変更に従わない使用者は、30万円以下の罰金に処せられます。
就業規則と労働契約の関係
就業規則の基準に達しない労働条件の労働契約は、その部分について無効となり、その部分は就業規則の基準によります。
それぞれの効力の関係は次のとおりです。
法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約
この効力の関係については、特に労働条件の変更の場合に注意が必要です。
例えば、個々の労働契約の労働条件を変更した場合、その労働条件が就業規則にも記載されている時は就業規則も変更しなければ、労働条件の変更は有効になりません。



