チヌという魚
黒鯛(スズキ目タイ科クロダイ属)【Black Porgy】 学名:Acanthopagrus schlegeli
北海道南部以南、台湾まで棲息している。琉球列島にはいない。
近種にはキチヌ(キビレチヌ)がいる。沖縄地方ではナンヨウチヌ・ミナミクロダイと呼ばれる種類がある。
チヌは古くから人との関わりが深く、明治の頃の東京湾隅田川河口での本種を釣る様子は幸田露伴の短編にも描かれる。
チヌという名前の由来は関西は大阪湾の事を古くは茅渟(ちぬ)の海と呼んでいたことから来たらしい?
チヌは性変化することで有名だが、このことは1936年に日本で発見された。
幼魚はすべて雄で2、3歳まで雄として成熟し、4歳以上の大型になるほど雌が多くなる。
つまり精巣が先に成熟して雄としての性機能を果たし、後に卵巣が成熟して雌としての性機能を果たす、「雌雄同体現象」と呼ばれる。
まれに一生雄のままで大型の精巣部を持ち雌の機能を果たさない個体もいるらしい。
出世魚としても有名で全国で呼び名が変わっている。関東では当歳魚をチンチン・二歳魚をカイズ(ケイズ)・成魚をクロダイと呼ぶ。中京ではチンタ・カイズ・チヌ。関西ではババタレ・カイズ・チヌ。九州では若魚をメイタ・成魚をチヌと呼ぶ。
湾内や河口に多いが磯にも生息し、時には淡水域にも登る。
2002年6月に福岡県船越漁港で釣れた70.8cm(拓寸)が日本記録。
チヌの人気
釣りの対象魚としては最も人気が高い。
その釣り方も種類が多く、磯・船・防波堤・筏といったあらゆるフィールドで、ウキ釣り・落し込み釣り・ダンゴ釣り・サーフ等の色んな釣りが行われている。
また、「備中釣り」「庄内釣り」「紀州釣り」「渚釣り」「濁し釣り」といった地方独特の伝統的な釣り方も引き継がれている。
釣り人にアンケートを取ってみると、ダントツの人気の対象魚はチヌである。
何処の書店に行っても釣具店に行ってもチヌ釣りに関する書籍やビデオも多く並べられ人気のほどがうかがえる。
チヌという魚は食べて美味しいという意見とまずいという意見に分かれる。
雑食性のあまりに住む場所・エサなどにより変わるといわれている。
地方によっては「卵巣に毒がある」「クロダイの肉は妊産婦の血を荒らす」と言われていたが根拠は定かではない。
私も以前はよく食べていたが、最近はあまり食べなくなった。
春先の産卵前のチヌは確かに美味しい。この時期のチヌの刺身はマダイにも負けない格別の旨さだ。
関西・中京の「チヌは絶対食べない」という釣友に、4月の始め頃だったか、ある時本人が釣ったチヌのお造りを強引に食べさせたところ、あまりの旨さに感激していた。
しかし、産卵を終える?と、極端に身が柔らかくなり、臭いも出て、最悪の魚になってしまう。
この頃のチヌをご近所や友人にプレゼントしようものなら、顰蹙ものである。
「まあ、新鮮なお魚どうもどうも...」といって受け取ってはくれても、裁いた瞬間に「臭い!、あ、これ腐ってる!きっと日が経っているか、余程保管が悪かったんだわ...」なんてことになる。
個体差があるみたいだが、釣った時にこれといっての判別する手段が無いので困ったものだ。
色々調べてみるのだが、原因と判別方法は未だ見つかっていない。
私も多少料理の心得があるのだが、今まで好評だった私のチヌ料理のメニューを作ってみた。レシピは後日upしようと思っている。
【スタンダードメニュー】
@ゴマチヌ(ゴマサバならぬゴマチヌ、みりん・醤油・酒・スリゴマにわさびで...)
A昆布じめ(切り身を出汁に浸けた昆布で巻いて寝かせたもの)
B漬け(余った刺身を酒・醤油に一晩浸けて、お茶漬けが旨い)
Cチヌめし(鯛飯と同じように、炊き込む)
Dお吸い物(醤油と塩だけで)
E煮付け(ゴボウに合う)
F唐揚げ(二度揚げして甘酢で)
Gあら炊き(唐辛子を入れて甘辛く)
Hふりかけ(フライパンで炒めて)
I骨蒸し(一度焼いてから)
【スペシャルメニュー】
@チーズと大葉のはさみ揚げ(梅肉を合わせても旨い)
Aアーモンドとほうれん草のカルパッチョ(季節の野菜を添えて)
Bチヌのさっぱりレモンソース和え(一度揚げて甘いレモンソースで)
Cチヌの和風餃子(納豆を合わせても)
Dチヌの塩釜焼き(豪快に一匹まるごと焼いて)
チヌという名前は地名から由来しているが、全国に”チヌ”と呼ばれていた、また呼ばれている地名を調べてみた。
【大阪府和泉市】
和泉地方は古くは「チヌ」と呼ばれ、「血沼」「茅渟」「珍努」「珍」と書かれる。 「古事記」にその由来を伝えており、「神武天皇が大和国に攻め入る時に那賀須泥毘古(ながすねひこ)と戦い、敗れて熊野に向かう途中、皇兄五瀬命(いつせのみこと)が矢傷を洗った海を血沼の海と呼ぶようになった」と書かれている。
同様のことが「日本書紀」にも伝えられているが史実は定かでない。
本居宣長の「古事記伝」に「黒鯛の一種である知奴(ちぬ)が、血沼海の名産であったところから、地名が魚の名称になった」とある。平安初期頃までひろく「チヌ」が使用されていたが、その後は次第に消えていった。
(和泉市史より)
【大分県津久見市千怒】
九州大分県にも「千怒」ちぬという呼び名の地名がある。
名前の由来はまだ調べていない。今度詳しく調べてみたい。