| 詩 |
| 兄弟 | |
初めて見た外国の映画は何か悲しかった ラーメンを食べ、喫茶店でアイスコーヒーを飲んだ 兄ちゃんが、後ろから入ってきた、タバコを吸ってる人達に 殴られて、お金をとられた 帰りのバス代が一人分しかなく 兄ちゃんが僕をバスに押し込もうとした 僕はバスから飛び降りた 兄ちゃんと歩いて帰った 先を歩く兄ちゃんの背中がゆれていた 僕も泣きながら歩いた(ビートたけし/詩集「僕は馬鹿になった」) |
| 失業者の夕暮 | |
ペコペコになつた腹をかかへて 護国寺裏の坂道を上つてかへる。 坂から見下す町町には 夕べのあかりが華やかにともつて そこここにたのしい夕餉がはじまつてゐるやうだ。 しばらくたちどまつて そのなつかしい夕景をながめてゐたら 犬が 俺の前にすこすこと出て来て おいしさうにウンコを食べて見せた。(木山捷平/木山捷平全詩集/詩集「野」) |
| 生きる | |
生きているということ いま生きているということ それはのどがかわくということ 木もれ陽がまぶしいということ ふっと或るメロディを思い出すということ くしゃみをすること あなたと手をつなぐこと 生きているということ いま生きているということ それはミニスカート それはプラネタリウム それはヨハン・シュトラウス それはピカソ それはアルプス すべての美しいものに出会うということ そして かくされた悪を注意深くこばむこと 生きているということ いま生きているということ 泣けるということ 笑えるということ 怒れるということ 自由ということ 生きているということ いま生きているということ いま遠くで犬が吠えるということ いま地球が廻っているということ いまどこかで産声があがるということ いまどこかで兵士が傷つくということ いまぶらんこがゆれているということ いまいまが過ぎてゆくこと 生きているということ いま生きているということ 鳥ははばたくということ 海はとどろくということ かたつむりははうということ 人は愛するということ あなたの手のぬくみ いのちということ (谷川俊太郎/詩集「うつむく青年」) |
| 愛しい時間 | |
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